これまで6回にわたって掲載してきた「仕事と育児の両立」に取り組むNPOのインタビュー。

最後となる7つめの事例は、放課後の小学校を活用したアフタースクールを開校し、様々な企業や団体とも連携しながら子育てプロジェクトを展開している「放課後NPOアフタースクール」です。事務局長の島村友紀さんと、本部事務局スタッフの栗林真由美さんにお話を伺いました。

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島村友紀さん
栗林さんプロフィール
栗林真由美さん
NPO 7団体の「仕事と子育ての両立」事例についてヒアリングしてまとめた「NPO ではたらく×そだてる NPO の“仕事と子育ての両立”事例集」で紹介した団体のインタビューを掲載しています。

<NPO事例インタビュー>
第1回: かものはしプロジェクト
第2回: トイボックス
第3回: ACE
第4回: マドレボニータ
第5回: みやぎ発達障害サポートネット
第6回: Learning for All

今も急成長期にある組織。スタッフの「仕事と『生活』の両立」が可能になる仕組みをつくりたい

島村:私どもの事業の始まりは、代表理事の平岩が「放課後に安全・安心な居場所の確保が必要」と考え、2005年に開始した地域の公民館での活動にあります。

2007年に公立小学校の放課後へのプログラム提供がスタートし、NPO法人化したのは2009年です。その後続々と小学校を使ったアフタースクールを開校し、協賛企業も増加して、2015年度からの3年で事業規模は4倍になりました。

—今も、まさに急成長のまっただ中なのですね

島村:そうですね。スタッフ数も急激に増えたので、団体として制度の整備や、スタッフの「仕事と『生活』の両立」、さらには、若いスタッフが将来の「仕事と『育児』の両立」を前向きにとらえられるような仕組みをつくる必要がありました。

グラフ

今も急成長期にある組織。スタッフの「仕事と『生活』の両立」が可能になる仕組みをつくりたい

—スタッフで子育て中の方はいらっしゃいますか?

島村:はい、多く活躍しています。ただそれは入職時からすでに子どもがいるスタッフです。子育てしながら働く人はいても、在職中に出産を迎えるケースは2017年までなかったので、産育休を取得し、その後仕事に復帰するといったロールモデルは今までこの団体にはありませんでした。

前例がないため、これから出産・子育てというライフイベントを迎えるであろう20代、30代を中心に、産育休を取って復帰し、この職場で長く働き続けるというイメージが描きにくかったのです。それは若い世代のスタッフにとって漠然とした不安につながっているのではと思いました。

そうした不安を払拭するために、2017年度にゴールドマン・サックス(以下、GS)の「子育てと仕事の両立」支援プログラムに参加し、プロボノ社員の方に、私どもの団体が抱える課題を洗い出して打ち手を考えるプロセスに伴走していただきました。

2017年にスタッフで初めて産育休を取得するケースがあり、18年4月の復帰を見据えていたタイミングでもありました。

実施概要

フレキシブルに勤務時間を設定しやすい本部と、もともと勤務時間が遅めで融通をきかせづらい拠点とのギャップが発生

—こちらの団体には、本部オフィスと、アフタースクールを運営する拠点とがありますが、働き方に違いはありますか?

島村:本部は事業企画、管理、人事、総務、経理等のバックオフィス業務が主ですので、比較的フレキシブルに勤務時間を設定しやすいです。一方、アフタースクールの運営拠点では子どもたちの放課後が活動の中心になるので、スタッフの勤務時間は遅くなりがちで、かつ柔軟に設定しにくいと言えます。

栗林:制度面では、事由を問わない時短制度や看護制度などが整備されています。しかし、拠点スタッフは業務量が多いこともあって、そうした制度を利用しづらいと感じていることが課題でした。

—現場があると、スタッフの都合で勤務時間を調整したり、リモートワークに切り替えるといったこともむずかしいですものね。

島村:そうなんです。また、2017年は各拠点で急な退職や休職が相次ぎ、人手不足が生じてしまいました。そのことで一人ひとりの業務の負担が増したことも、拠点スタッフの負担の原因になっていました。

とくに「エリアマネージャー」という各拠点のプログラム開講や採用研修を担うスタッフたちが、抜けたスタッフの穴埋めをせざるを得ず、さらに負担が大きくなっていましたので、その役割の見直しも急務でした。

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「人事チーム」を新設し、人事制度の見直しを行う

—具体的には、どのような取り組みを進められたのでしょうか?

島村:GSプロボノチームにも相談し、エリアマネージャー業務に関しては、負担の大きかったそのあり方を見直して、「採用・研修チーム」を新設することにしました。

それまでは数名のエリアマネージャーで各担当拠点の採用・研修、開講準備、営業を行っていたのですが、一人ひとりの抱える業務があまりに多かったため、各拠点のエリアマネージャーをチーム化して分業することにしました。

業務の拡大スピードに合わせて採用業務の重要性が増していたのですが、採用後のミスマッチを防ぐことも同時に行わなければ、人が定着しません。そこで、採用からその後の配置や定着までをしっかり通して行えるよう、エリアマネージャーの仕事を「採用・研修」と「開校・プログラム開発」に分け、関わる人員も増やしました。

それまでは個人で担当していた仕事をチーム化して行うことで、ノウハウの蓄積ができるという期待があります。

さらに、スタッフが長く働き続けられる組織を目指して、人事制度の変更を行いました。

もともと制度面においては柔軟な組織で、各種制度の見直しを毎年しているのですが、2017年は本腰を入れて人事制度を見直すことにしました。

常勤スタッフ全員での打ち合わせを3回行い、人員体制、採用要件、評価、給与、働き方、休職・短時間勤務、福利厚生などの項目を改訂しました。

また、スタッフの意見を取り入れて、「仕事と育児の両立」にとどまらない、それぞれのライフステージを応援するメッセージを打ち出すことにしました。

業務の標準化・効率化を行って、適正人数を把握、スタッフの大量採用へ

—業務量の多さも課題というお話がありましたが、それについてはどのような対策をされましたか?

栗林:それまでは、各拠点が自分たちの実情に合わせたやり方で進めていました。標準化や効率化に取り組もうとしても、統一した方法で業務を行っていなかったので、いったい何が課題なのか、外からは見えにくい状態でした。

そこで、2017年度はトライアル的に、アフタースクールを開設している公立と私立の小学校を1校ずつピックアップして、スタッフのタスクの洗い出しを行いました。

担当者、業務内容、かかる時間、業務の重要性など、タスクの「見える化」を行い、表を作成しました。そうすると、意外な業務に時間がかかっていたり、もっとここは効率化できる、もっとここは人を入れた方が良い、ということが整理しやすくなったんです。

島村:「人が少ない」「忙しい」というスタッフの体感だけでなく、こうしたプロセスを通して業務における適正人数が把握できました。スタッフから「自分たちの給与を上げるよりスタッフを増やして欲しい」という声が上がったため、スタッフの増員にも踏み切りました。

2018年4月には、新たに16名の常勤スタッフを迎えたんです。多くの新スタッフを迎え入れるため、新設した採用・研修チームを中心にフォローの面談を進める等、採用から定着、育成の流れを一貫して進めることができ始めてきました。

業務内容が可視化され、人員が補強されたことによって、スタッフが仕事と生活の両立に前向きになってくれることを期待しています。

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産育休から復帰をサポートする取り組み

—18年4月に初めて産育休を取得後復帰されるスタッフの方がいらっしゃるとのことですが、復帰後どのような働き方をされていますか?

島村:正職員の時短枠を使って、一日5時間の勤務で復帰しています。2018年度内には、5名のスタッフが新たに出産を迎えて、現在休暇に入っています。次年度以降、それぞれの想いに合わせた復帰後の働き方を実現できるようサポートしていきたいと思っています。

これからも試行錯誤しながら、さまざまな取り組みを進めていこうと思っています。

(インタビュー・文/パブリックリソース財団 瀬名波雅子)

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<参考情報>

●「仕事と育児の両立」への取り組み概要

表

【団体情報】 NPO法人 放課後NPOアフタースクール
放課後の小学校を活用したアフタースクールを開校し、様々な企業・団体等とも子育てプロジェクトを展開しているNPO
設立年 : 2005年(2009年 法人格取得)
体 制 : 常勤スタッフ43名、非常勤スタッフ139名
住 所 : 〒105-0004 東京都港区新橋6-18-3 中村ビル2F
URL: http://npoafterschool.org/