「仕事と育児の両立」に取り組むNPOのインタビュー。

第5回目は、自閉症や発達障害のある子どもと家族への支援に取り組む認定NPO法人「みやぎ発達障害サポートネット」です。代表理事の相馬潤子さんと事務局長の渡邉桂子さん、そして2014~15年に産育休を取得したスタッフの村主由佳さんの3人にお話を伺いました。

 

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相馬潤子さん
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渡邉桂子さん
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村主由佳さん
NPO 7団体の「仕事と子育ての両立」事例についてヒアリングしてまとめた「NPO ではたらく×そだてる NPO の“仕事と子育ての両立”事例集」掲載団体のインタビューを、順次、本サイトでも掲載していきます。

<NPO事例インタビュー>
第1回: かものはしプロジェクト
第2回: トイボックス
第3回: ACE
第4回: マドレボニータ

利用者の大幅増により、属人的な対応を見直す必要性に直面。スタッフの産育休が仕組みづくりの後押しに

相馬:私たちは2005年に、自閉症や発達障害がある子どもを持つ保護者と支援者が集まり任意団体としてスタートしました。その後2007年にNPO法人格を取得し、2010年に宮城県で初めての認定NPO法人となりました。

東北で同じような活動を行なっている団体が少ないこともあり、この頃から口コミで利用者が増加し続けていました。

渡邉:当時からスタッフのほとんどは子どもを持つ女性で、様々な事情を抱えながらも勤務時間や内容を調整して業務を行なっていました。しかし、利用者が大幅に増えたことにより、「この利用者はこのスタッフが担当する」というような属人的なやり方から、スタッフであれば誰でも柔軟に担当を代わったり、引き継ぐことができる仕組みをつくる必要がありました。

村主は2011年の震災後に宮城県の緊急雇用創出事業を活用して採用した常勤スタッフなんですが、彼女が2014年に産育休を取ることになったんです。

ちょうど同じ年に団体の組織基盤を強化するためのPanasonic NPOサポートファンドの助成を受けることができ、このプログラムの一環でスタッフの行動プランを毎年見直すようになりました。働き方を考えるこの2つのきっかけが重なったことが、仕組みづくりを推し進めることにつながりました。

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「記録と」「共有」で、支援プロセスや内容の「見える化」を実現

——対人支援の現場では、利用者や保護者からの希望や相性などから、属人的な対応をなくすのは難しいとも聞きます。他のスタッフに「代われる」「引き継げる」仕組みづくりは、どのように進められたのでしょうか?

渡邉:支援プロセスや内容の「見える化」を心がけました。子どもごとにファイルを作成して、家庭環境や診断結果、その日行ったプログラムや行動の記録などをまとめて保管するようにしました。

——毎日利用者の方たちと向き合いながら、もれなく記録を残すというのは大変ではありませんか?

渡邉:記録は正確に、でも時間をかけないように工夫をしています。スマホで撮った写真をkeynoteで印刷して、そこにメモをしてファイルに保管するといったやり方で、なるべく短時間で済ませています。

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また、「記録」だけでなく、「共有」の場も大事にしています。

毎日の「療育ミーティング」はランチの時間に設定し、日々のタイムリーな情報を交換する場にしています。参加できなかったスタッフには、議事録で共有します。それに加えて、月に一度ケース会議を行い、スタッフが抱えているケースの報告を行います。

村主:私が産育休に入る前も、こうした毎日の共有に加えて、時間をかけて引き継ぎを行ったため、休み中の不安はありませんでした。

渡邉:支援内容やプロセスの「見える化」を行う前は、難しいケースの場合は、担当が休みの時は利用者にも休んでもらうというようなこともあったのですが、今は他の人がカバーに入れます。スタッフも「何が何でも自分が対応しなければ」という気負いが減ったように思います。

それに、特定のスタッフだけでなく、複数のスタッフが関わって一人の子どもを見ることによって、スタッフ側の気づきもあるんですよ。他のスタッフのやり方を見て新たな発見が生まれることも多く、スタッフの成長にもつながっていると思います。

——ほとんどのスタッフが子どものいる女性とのことですが、さまざまなご事情がある中で、どのように勤務を調整されているのでしょうか?

渡邉:担当しているプログラムや利用者、自身の家庭の事情に合わせて、曜日によって出勤時間を決めています。都合により勤務中に中抜けなどの必要がある場合は、各チームのリーダーに申請します。

スタッフの家族の事情もだいたい把握しているので、「お互いさま」ということで、融通を効かせながらやってきています。スタッフとの定期面談などは行っていませんが、代わりに日々のコミュニケーションを大事にしています。

村主:私は産育休から復帰したときに、渡邉から「週5日、毎日働けると思わないほうがいい」と言われました。復帰してみたら、本当にその通りで(笑)。

でも、子どもが熱を出したりして休まざるを得ない時も、それが当然という周りの雰囲気に助けられました。もともと周りの人が育児と仕事をやりくりしながら働いていたのを見ていたため、周りからの共感や協力を得られるイメージがあったことも安心につながっています。

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スタッフの要望を受け、就業規則を改訂

——スタッフで産育休を取得されたのは村主さんが初めてということですが、就業規則はもともと整備されていたのでしょうか?

渡邉:はい。2010年に認定を取得したタイミングで就業規則を作成していました。2014年に村主の産育休前に読み合わせを行なって、そのままで問題ないことがわかったので、その時は特に何もしませんでした。でも、最近になって改訂したんですよ。

村主:産育休の取得や復帰は問題なかったのですが、就業規則の規定では時短勤務が「子どもが3歳になるまで」となっていたのです。3歳以降は時短勤務ができないとなると仕事を続けることが難しくなりそうで、小学校入学まで認めてもらえないかと相談しました。

渡邉村主の希望を受けて、2017年に就業規則を改訂し「子の小学校入学まで」時短勤務ができるようにしました。

村主:ホッとしました。この職場で長く働いていくイメージが、さらにしっかりと固まったように思います。

子育ての悩みや葛藤は、仕事上の強みに変えられる

——村主さんは、産育休の取得前後で何か心境の変化はありましたか?

村主子どもを産んで親になったことで、自分の支援の質が変わってきたと感じています。以前より親の気持ちがわかるようになったというか、共感を持って寄り添えるようになったかな、と。

利用者の方たちはもちろん、保護者を支えていくことも私たちの大事な仕事です。そのことを以前より実感する機会が増えました。自分の子育ての悩みや葛藤が仕事での強みに変わることも多くあり、自分も成長できていると感じます。

復帰した当初は両立に不安がなかったわけではありませんが、踏ん張って良かったです。年下のスタッフには、子どもを産んでも仕事は続けられるよ、と伝えています。

——これからの課題があれば教えてください。

渡邉:事業所の開所時間は9時から19時なのですが、17時以降はスタッフ自身が子どものお迎えに行かなければならなかったりで、どうしても手薄になりがちなんですね。なんとか調整しながらスタッフを配置していますが、今の人数ではそれも厳しくなってきているので、来年には新たにスタッフを増やそうと計画中です。

村主:他のスタッフに「代われる」「引き継げる」仕組みにすることで利用者の増加に対応してきたのですが、今はまた業務量が増えてきて、各スタッフが目一杯仕事を持っている状態です。ちょうど人を増やしたり、やり方を見直したりする時期に来ているのかもしれません。互いに思いやり、融通が効かせやすい職場なので、そうした良さを生かしつつ、さらに成長できる組織になれたらと思います。

(インタビュー・文/パブリックリソース財団 瀬名波雅子)

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<参考情報>

●「仕事と育児の両立」への取り組み概要

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【団体情報】 認定NPO法人 みやぎ発達障害サポートネット
自閉症/発達障害のある子どもと家族への支援に取り組むNPO

設立年 : 2005年(2007年 法人格取得)
体 制 : 常勤スタッフ7名、非常勤スタッフ6名
住 所 : 〒981-0904 宮城県仙台市青葉区旭ヶ丘3-20-16
URL: http://mddsnet.jp/