妊娠から出産、育児、職場復帰に関する法的制度

仕事と子育ての両立を可能にする働き方は、さまざまな法制度によって支えられています。

妊娠中または出産後の女性労働者について労働基準法などで事業主に義務付けられていること、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で定められている子育てと仕事を両立させるための主な制度をまとめました。

該当する法令等の条文や規定されている内容の詳細については、以下の厚生労働省のwebサイトなどをご参照ください。

厚生労働省「両立支援のひろば」

厚生労働省「女性にやさしい職場づくりナビ」

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(1)妊娠中や出産後の母性保護などの制度

  • 時間外、休日労働、深夜業の制限(労基法66第条第2項及び第3項)
  • 変形労働時間制の適用制限(労基法第66条第1項)
  • 軽易業務への転換(労基法第65条第3項)
  • 危険有害業務の就業制限(労基法第64条の3)
  • 妊産婦のための保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(均等法第12条)
  • 医師等からの指導事項を守ることができるようにするための措置(均等法第13条)

妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等)、休憩(休憩時間延長、休憩回数の増加等)、妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(作業の制限、休業等)

(2)産前・産後休業、育児休業

  • 産前休業:出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得可(労基法第65条第1項)
  • 産後休業:出産日の翌日から8週間は就業できない。ただし、産後6週間を経過後に、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務には就業可(労基法第65条第2項)
  • 解雇制限:産前・産後休業の期間及びその後30日間の解雇は禁止(労基法第19条)
  • 育児休業:1歳に満たない子を養育する従業員は、男女を問わず希望する期間子どもを養育するために休業できる(育児・介護休業法第5~第9条の2)
  • パパママ育休プラス:父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間に父母それぞれ1 年間まで育児休業を取得できる。(ただし出産した母の場合は出生日、産後休業期間と育児休業期間をあわせて1年間)(第9条の2、第5条第1、3、4項、第9条第1項)
  • 育児休業期間の延長:子が1歳以降、保育所等に入れないなどの一定の要件を満たす場合は1歳6か月まで。2017年10月1日から、子が1歳6か月に達した時点で保育所等に入れないなどの一定の要件を満たす場合、最長で子が2歳に達するまで(第5条第3、4項)
  • 育児時間:生後満1年まで1日2回各々少なくとも30分(労基法第67条)

(3)休業以外の制度

  • 短時間勤務制度、所定外労働の制限(3歳まで)(育児・介護休業法第23条第1項、第16条の8)
  • 子の看護休暇(小学校入学まで):年次有給休暇とは別に1年につき子が1人なら5日まで、2人以上なら10日まで、1日単位または半日単位(所定労働時間の1/2 )で取得可(育児・介護休業法第25条)
  • 時間外労働、深夜業の制限(小学校入学まで)(育児・介護休業法第17条、第19条)
  • 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(均等法第9条)

例:解雇、契約の更新をしない、契約の更新回数の上限引き下げ、退職又は正社員をパートタイムの非正規社員とするような労働契約内容の変更強要、降格、減給、昇進・昇格における不利益な評価など

         妊娠から出産、育児、職場復帰までの法的制度

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出所:厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ(パンフレット)」14 制度等まとめ

出産や休業に対する経済的支援

出産や休業に際して、社会保険料の免除や金銭の支給などが受けられる制度もあります。

産前・産後休業期間中の社会保険料の免除 健康保険・厚生年金保険の被保険者 産前産後休業期間の健康保険料、厚生年金保険料は、事業主が日本年金機構(年金事務所)に申出ることにより被保険者分及び事業主分とも免除される。なお事業主であっても被保険者であれば保険料免除を受けられる。
育児休業等期間中の社会保険料の免除 健康保険・厚生年金保険の被保険者 育児休業等をしている間の健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除される。
出産手当金 健康保険の被保険者 出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合、出産日以前42日から出産日後56日までの間、欠勤1日について、健康保険から賃金の3分の2相当額が被保険者に支給される。
出産育児一時金 健康保険や国民健康保険の被保険者及びその被扶養者 出産した場合、申請により1児につき42万円が支給。
育児休業給付金 雇用保険加入者 育児休業をした場合、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額の給付。

就業形態によっては対象外に。NPOは、新たな両立の仕組みを作れるか?

ところで、このブログの2018年4月28日の記事「「女性経営者」「フリーランス」と、出産育児に関する社会保障制度」でも言及していますが、こうした制度は、被雇用者雇用保険加入者健康保険や厚生年金保険の被保険者などに適用されるもので、就業形態が多様化しているなか、その対象から外れている人はかなりの数にのぼると考えられます。

NPOにおける就業の形態は、経営者や正職員、契約スタッフ、フリーランス、パートタイム、ボランティアなど、性別や年齢を問わずさまざまです。

子育てと仕事の両立が可能な労働環境の実現には、法の遵守は言うまでもなく、今回ご紹介したような法制度を確実に利用できるように、就業規則をはじめとする各種規定の整備や見直しを進めることが、さしあたっての対応となるでしょう。

これまでもNPOは、多様な働き方の受け皿となってきました。

就業形態の違いが出産・子育てというライフイベントでの不利益につながらないよう、新しい仕組みを創り出し団体独自の実践を重ねていくことで、NPOから柔軟な働き方を社会に発信していくということも、これから期待できるのではと思っています。

(パブリックリソース財団 藤本貴子)