両立支援を推進する次世代法

仕事と子育ての両立支援には労働基準法をはじめ多くの法律が関わっていますが、なかでも1985年に制定された男女雇用機会均等法、1999年の男女共同参画社会基本法、1995年の育児・介護休業法、2003年の次世代育成支援対策推進法、2015年の女性活躍推進法は、それぞれ改正を経ながら、行政や企業による取り組みを前に進める契機となってきました。

「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国や地方公共団体、企業、国民が担う責務や対策の推進に必要な事項を定めたもので、2014年度末までの時限立法として2005年に施行されましたが、その後の改正で2024年度末までさらに10年間延長されています。

次世代法では、企業に対し、仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない人も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むにあたって、行動計画(「一般事業主行動計画」)を策定するように求めています。

今回はこの「一般事業主行動計画」(*1)を取り上げます。

常時雇用する従業員が101人以上の企業は、仕事と子育ての両立を図るための行動計画の策定と、一般への公表や従業員への周知、都道府県労働局への届出が義務付けられています。従業員が100人以下の企業には努力義務が課せられています。

2018年3月末現在、全国の常時雇用101人以上の企業47,684社のうち98.6%が届出を済ませており、100人以下の企業でも31,015社が届け出ています”(*2)

多くの従業員を抱える企業がやるべきことで、NPOでの働き方や子育てとの両立にはあまり関係がないのでは?と思われるかもしれませんが、すでに行動計画を策定して団体のホームページなどで公開しているNPOは少なくありませんし、行動計画を策定していく過程そのものをうまく利用して、両立支援制度の整備や働き方の見直しなどに結びつけている団体もあります。

次世代法の「一般事業主行動計画」とは

まずは「一般事業主行動計画」がどんなものか見てみましょう。

公表が原則となっていますので、例えば厚生労働省「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」では全国の企業や団体が登録した行動計画を検索、閲覧することができます。2018年5月現在でおよそ55,000件の登録があり、名称に「NPO」、「特定非営利活動法人」が含まれている団体だけでも132件あります。

行動計画には、①計画期間、②目標、③目標達成のための対策およびその実施時期を示さなければなりません。

一例として、公表サイトに登録されている認定NPO法人かものはしプロジェクトの行動計画を見てみると、①計画期間は2017年1月から3年間、②目標は5つあり、1番目の「在宅勤務規程を見直し、職員の多様な働き方に配慮した制度とする」という目標に対しては、③その達成のための対策および実施期間として、「2017年1月から在宅勤務規程の見直し・改定、2017年度に定期的に職員のニーズを再確認し、更なる改定の要否を検証する」と書かれています。

この団体では、2016年に共同代表と管理職が同時に産休・育休を取得しており、両立支援のために業務や諸規程の見直しなどを行っています。

取り組みの具体的な内容は、近日発行予定の『NPOではたらく×そだてる NPOの”仕事と子育ての両立”事例集』をぜひご覧ください。またこのブログでも後日ご紹介する予定です。

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行動計画を策定するステップ

行動計画を策定する手順は、厚生労働省のwebサイトリーフレットなどに記載されています。

ここでは主なポイントのみ記しますが、今すぐ計画を策定することは難しいNPOでも、両立を支援するために何をしなければならないか、不足している対策は何かといったことを把握するうえで参考にできる点も多いのではないでしょうか。

【ステップ1】団体の現状や働いている人のニーズを把握

行動計画を実情に即したものとするために、両立の障害になっていることや働いている人のニーズを把握します。以下のようなことを過去5年程度さかのぼって調べると課題が見えてくるでしょう。

ž ・妊娠・出産を機に退職する人、子育て中の人がどれくらいいるか?
・育児休業、看護休暇や育児のための柔軟な働き方などの利用者数(性別・年齢別)は? 平均的な利用期間は?
・休業者が行っていた業務はどのように処理されているか?

働いている人のニーズを把握するためには、以下のような項目を調べてみましょう。

・ワーク・ライフ・バランス支援制度の認知度や利用意向
・現在の支援制度に対する満足度
・仕事と子育ての両立で苦労している点
・労働時間の短縮や年次有給休暇の取得への希望
・今後、団体で検討・実施してほしい支援制度  など

【ステップ2】ステップ1の結果をふまえて「行動計画」を策定

①      まず、ステップ1で明らかになった課題に優先順位をつけます。

②      計画期間を決めます。

③      その計画期間に達成する目標を定めます。

目標は、できるかぎり定量的な数値目標にします。例えば「○年までに育児休業取得率を男性○%、女性△%とする」など。「制度の導入」を目標にする場合は、法令にある最低基準ではなく、それを上回る水準にします。

④      目標を達成するための具体的な対策を立てます。

【ステップ3】計画をWebなどで一般に公表し、働いている人に対しても社内ネットワークへの掲載や配布などによって周知

【ステップ4】都道府県労働局雇用均等室に届出

【ステップ5】行動計画を実施し、目標の達成に取り組む

【ステップ6】認定を申請・取得し、くるみんマークを活用

くるみん認定とは

行動計画を策定し、その行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした場合、必要書類を添えて申請を行うと「子育てサポート企業」として「くるみん認定」を受けることができます。

認定を受けると「くるみん」マークを商品、広告、求人広告などにつけて、子育てサポート企業であることをPRすることができます。

くるみんマークを取得している企業のうち、さらに両立支援の取り組みが進んでいる企業が一定の要件を満たした場合に受けられる特例認定(プラチナくるみん認定)もあります。

2018年3月末現在、くるみん認定を受けた企業は2,878社あり、このうち195社はプラチナくるみん認定を受けています。

くるみん、プラチナくるみん認証マーク

認証手続きの詳細については、厚生労働省のリーフレットなどをご覧ください。

(パブリックリソース財団 藤本貴子)

(*1)女性活躍推進法でも、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、①自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、②その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取り組みを盛り込んだ行動計画(「一般事業主行動計画」)の策定・届出・周知・公表、③自社の女性の活躍に関する情報の公表が義務付けられています(300人以下の中小企業は努力義務)。

(*2)厚生労働省「次世代育成支援対策取組状況」都道府県別一般事業主行動計画策定届の届出及び認定状況(平成30年3月末)