政策的にも多様な働き方が促進されつつある今、「子育てと仕事の両立」推進の本質的な意義とは?働き方多様化にあたっての生産性をどう考える?今回は、2016年にパパ育休を取得され話題となったNPO法人クロスフィールズ・小沼代表にお話を伺いました。

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■contents
・育児を通じて「複眼的」になる
・働く仲間の幸せを思いやる
・「質問責任」と「説明責任」を果たす
・健全に話し合える関係性の構築は、すべてのスタートアップの課題
・生産性を高める努力を続けていくということ
・社会の矛盾に向かい合うNPO経営者は、組織の矛盾にも向かい合える

育児を通じて「複眼的」になる

―小沼さんといえば、ブログにご自身の子育て生活について書かれていらっしゃるように、NPO代表業務のかたわら積極的に子育てに関わっていらっしゃるイメージです。

先日、娘の保育園で一日保育士体験をしたんですね。保育士と保護者の関係をサービスの提供者と受益者だと考えるとクレームを言う関係になるわけですけど、保育士体験を通じて役割の行き来をすると課題が肌感覚で理解でき、じゃあ課題をどうやって解決しようかと協力的な関係になるように思います。

それに、保育園の交流の中では「○○ちゃんのパパ」でしかない。クロスフィールズの小沼ではない。なんだか新鮮で緊張しますし、わくわくします。

自分のいろんな役割を認知して、普段と違う役割に身を置くことで、複眼的になる。

クロスフィールズで進めている「留職プログラム」もそうですが、役割を行き来することで心理的な分断がなくなっていき、シームレスな世の中になっていく、そういう気がしています。


―2016年に育休を取得されたことをブログで公表されました。数々のメディアに取り上げられ、反響も大きかったと思います。育休を取ったのもご自身のご希望だったのでしょうか

僕は第二子の時に育休を取得しましたが、第一子の時、2013年には取っていません。この頃、男性の育休、さらに経営者となると本当に珍しかったです。サイボウズの青野さんが育休を取り、フローレンスの駒崎さんが続き、世間がホントに驚いた、そんな感じでしたよね。

僕は駒崎さんの話を聞き、第一子の時に育休を取りたいと思いましたが、この時は団体を立ち上げて2年半、メンバーは10人弱。悔しいけれど僕がいま育休を取ることはちょっと考えられない、そういう状況でした。なので、次の子のときには必ず育休を取る、3年後にターゲットを定め、僕が育休を取れるぐらいの組織に育てる、そう目標に決めました。計画的に取り組んできたつもりです。

経営者のパパ育休は、NPOはあまり増えていないかもしれませんが、メルカリの小泉社長も育休を取るなど、ベンチャー企業でも増えていますよね。経営者に限らず、この数年で本当に状況が変わったなと思います。

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―いざ小沼さんが育休を取るとなったときの、メンバーの反応はいかがでしたか

クロスフィールズが組織の価値観として掲げているCROSS FIELDS WAYには「働く仲間の幸せを思いやる」という項目を入れているんですね。「幸せ」には育児や家族だけでなく、趣味や自己成長なども含みます。仕事が全てではないというカルチャーはできていたので、ポジティブに受け取ってもらえたと思います。


―小沼さんは育休期間中、完全に業務から離れていたんですか

育休期間中も、僕は10〜15%は稼動していました。多くの方から「完全に休まなきゃダメだよ」と指摘を受けましたが、僕自身としてはゼロか100かの選択を迫られて育休が取れなくなるより、このある意味で「不完全な育休」をもっと奨励したいですね。

僕の場合は、自分がどうしても出なきゃいけないミーティングは出て、残りは全て権限委譲するという形でした。これをきっかけに全社的な権限委譲が進んだ部分はありますね。

正直、事業面や組織面でのタイミングとしてはあまり良くない時期でもあったので、メンバーは本当に頑張ってくれたと思います。戻ってきたときにはチームの成長を感じました。

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