これまでの記事では両立推進や長時間労働の削減といった働き方の見直しメリットを多くお伝えしてきましたが、取り組みを進めるにあたっては、実際に現場対応を担う管理職の業務負担の増加を懸念される方も多いのではないでしょうか。

「両立に関する調査・データ」シリーズラストとなる本記事では、管理職を取り組みの犠牲にしない、管理職や経営陣含めた組織全員にとっての子育てと仕事の両立や、働き方を考えていきます。

管理職は長時間労働の傾向

企業に在籍する正社員に対する2016年の調査では、管理業務を担う役職ほど平均実働時間が長い傾向が読み取れます。過去1年に1ヶ月60時間の所定外労働時間を超えた経験は一般社員で14.3%に対し、課長代理クラス以上では27.6%となっています。

■労働者に聴いた労働時間の現状

9-1独立行政法人 労働政策研究・研修機構「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」結果 および「労働時間や働き方のニーズに関する調査」結果 (2016年)より筆者作成


企業の管理職を対象とした調査では、管理職の約半数が「所定外労働時間の削減」「年次有給休暇の取得促進」を推進できているとする一方で、約40%が「業務削減」の推進が難しいと回答しています。

 

9-2.png(引用)NPO法人ファザーリング・ジャパン「『ボスの本音(ボスジレンマ)』 に関する調査報告」(2016年)

近年、長時間労働の削減をはじめとした部下のワークライフバランスの促進が社会的要請として強まっている中、一部で管理職にしわ寄せが及ぶ状況が発生している可能性が推察できます。

 

両立推進に向けて、管理職は会社からのサポートを求めている

子育てと仕事の両立への配慮や、ワークライフバランス・働き方向上の取り組みは、日本における管理職業務の中では新しいテーマといえます。

管理職の約90%が、働き方改革の推進について職場サポートが不十分と回答しています。

9-3(引用)NPO法人ファザーリング・ジャパン「『ボスの本音(ボスジレンマ)』 に関する調査報告」(2016年)


必要なサポートには「業務量の削減」に次いで、「マネジメント研修」が上がっています。「業務量の削減」は課長56.0%に対し部長41.3%と課長職で高い割合にあります。

 

9-4(引用)NPO法人ファザーリング・ジャパン「『ボスの本音(ボスジレンマ)』 に関する調査報告」(2016年)


働き方の取り組み推進にあたっては、業務量そのものの削減は容易でないこと、また社内ノウハウの蓄積のほか、社会的にも先行事例がそう多くない状況にあり、自身の知識インプットや知識の咀嚼、推進の経験などが不足していると管理職が考える状況が推察されます。

「管理職に一任」する働き方の取り組み推進は、管理職の負荷を高めるだけになってしまうかもしれません。

 

両立推進は、管理職の教育や成長機会になる

一方で、会社によるワークライフバランス支援への取り組みや労働時間管理の改善に向けた取り組みは、管理職のマネジメント力を高め、職場のワークライフバランス実現や生産性向上に寄与するという調査分析結果もあります。(1)

「子育てと仕事の両立」など働き方の見直し・推進は決して簡単ではない取り組み課題ですが、管理職への教育機会の提供や、成長のきっかけになりうるのではないでしょうか。

NPOにおいては団体設立から年数が浅く、団体内にマネジメントノウハウの蓄積が少ないケースもあるものと思われます。推進にあたっては、個々のスタッフへの対応を管理職に一任するだけでなく、管理職が「両立」テーマにとどまらず広くマネジメントを学ぶ機会や、管理職に伴走する体制を持つことも重要と考えられます。先の記事でみたように、外部リソースの活用や業務そのものの見直しも重要となるでしょう。

子育てと仕事の両立や、働き方の改善は、決してスタッフだけのものではありません。

管理職や経営陣を含め組織の全員が心身ともに健康にいきいきと働ける環境づくりを進めること、強くしなやかな組織を創っていくことが、その本質ではないでしょうか。

(一般社団法人RCF 中澤裕子)

(1)東京大学社会科学研究所ワーク・ライフ・バランス推進・研究プロジェクト「「管理職の働き方とワーク・ライフ・バランスに関する調査」に基づく 『管理職のWLBの現状とWLB支援のための職場マネジメントの課題』 ―調査結果の概要と提言― 」(2010年)

 

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