前回の記事では、企業における両立支援の取組内容と、当事者ニーズについて取り上げました。今回は、両立支援の取り組み効果と、両立支援の取り組み効果を高めるための施策について考えていきます。

両立支援の取り組み効果

今回は両立支援の取り組みの総論として、ワークライフバランス向上のための施策の取り組み状況と、働き方や生産性などの変化状況を比較した調査を取り上げます。

総論として、両立支援の取り組みにはどのような効果が期待できるのでしょうか?

2016年の内閣府調査では、ワークライフバランス取組レベルの高い企業では、定着率、採用、従業員満足度など働き方や生産性に関する項目の全てで取組レベルの低い企業を上回るという結果が出ています。

6-1

6-2

(引用)内閣府「仕事と生活の調和推進のための職場マネジメントのあり方に関する調査研究 報告書」(2016年)

 

中小企業においても同様の傾向が読み取れます。特に、所定外労働時間の削減と採用実績への効果が大きいことが伺われます。

6-3(引用)内閣府「仕事と生活の調和推進のための職場マネジメントのあり方に関する調査研究 報告書」(2016年)

 

人材育成策との組み合わせで取組効果アップ

それでは、両立の取組を推進していくにあたり、その取組効果を高めるためのポイントはあるでしょうか?

2006年とやや古いですが、企業における両立支援やその他従業員へ対する取り組みが人材確保・定着や、企業業績に及ぼす影響等について分析した調査(1)があります。

この調査では、両立支援策を企業の人材育成策と組み合わせて実施することにより、人材確保、モチベーションの向上、企業業績へプラスの効果があることが示されています。

【調査結果】

6-4

6-45

6-66

(引用)厚生労働省・株式会社ニッセイ基礎研究所「両立支援と企業業績に関する研究」2006年中の「発表資料続き(ポイント)

 

【結論】

6-6(引用)厚生労働省・株式会社ニッセイ基礎研究所「両立支援と企業業績に関する研究」の「発表資料続き(ハイライト)」2006年

この調査では「両立支援制度の導入が、すべてのケースにおいて、直ちに企業業績を高める方向に働くとはいえず、その成否は企業における人材育成のあり方や人材活用のあり方などと密接に関わっていることを示唆している」とまとめられています。(2)

両立支援の取り組みは、性別や年代問わず、組織における人材活用のあり方と切り離せない関係にあるといえそうです。

両立支援策を全社方針の一部に位置付ける

また企業のパフォーマンスと、ワークライフバランスや女性の人材活用との関係について統計的に分析した別の調査においても、性別にかかわらず能力開発をし、かつ長期雇用を重視する企業では、育児介護支援やワークライフバランスの推進が企業のパフォーマンスの向上に結びついていることを示唆する結果が出ており、人材育成目的でワークライフバランス施策を充実させるべきであるという、同様の結論が示されています。(3)

これらの調査結果からは、全社的な人材育成策の一環として両立支援の取り組みや、ワークライフバランス推進の取り組みを行うことで、相互に取組効果が高まることが伺われます。

両立支援の取組が全社的な人材育成策の一環に位置付けられることで、両立支援の取り組みは両立の当事者だけでなけのものではなくなり、推進に対するスタッフの理解や取り組み姿勢も変わっていくと考えられます。

前回記事でお伝えした法定通りの両立支援制度の整備を進めるとともに、全社的な人材育成・活用策を講じ、そこへ両立の取り組みや関連する取り組みを位置づけ、各組織の課題やスタンスに応じて取り組みを拡張していくことで、安定した人材確保や生産性の向上といった取り組み効果を高めていくことへつながっていくのではないでしょうか。

(一般社団法人RCF 中澤裕子)

■■

(1)(2)厚生労働省・ニッセイ基礎研究所「両立支援と企業業績に関する研究」2006年

(3) 山口一男「企業のパフォーマンスとWLBや女性の 人材活用との関係: RIETIの企業調査から見えてきたこと」独立行政法人経済産業研究所BBL、2011年