ここまでの記事では両立の取り組みメリットについて、離職防止などの観点から取り上げてきました。この回は、具体的な両立支援の取り組み内容について、また従業員のニーズについて取り上げていきます。

仕事と子育ての両立支援とは

 「仕事と子育ての両立支援」とは、従業員の仕事と家庭(育児・介護など)との両立を企業が支援することで、従業員が働きやすい職場環境を整えるための取り組みです。(1)

厚生労働省ではその取組メリットを

「例えば、従業員が子どもを産み育てながら仕事を続けるために、また親の介護をしながら仕事を続けるために、休業制度を導入したり働く時間に柔軟性をもたせるなど、仕事以外の時間の確保が必要な従業員が働きやすい環境を整備することで、従業員が辞めることなく働き続け、長く活躍してもらうことが可能になります。

またそのような環境は、その他の従業員にとっても働きやすい環境となります。」と説明しています。(2)

政策的には「一億総活躍社会」に向けた「働き方改革」において、複数の検討テーマをまたぐ重要な取り組みに位置づけられています。(2017年2月現在)

■「働き方改革」検討テーマ9項目図1首相官邸ホームページ 「働き方改革実行計画 (工程表)」より筆者作成。下線は仕事と子育ての両立支援に関連するテーマ。


「両立支援」が政府で本格的に議論され始めた2000年代、両立支援は当事者、特に女性向けの取組でした。しかし議論の進展とともに男性向けにも広がり、また子育てに限らず介護や病気治療中の方々の両立も課題として議論されるようになりました。

両立支援は家庭生活との両立支援、すなわち労働者全体へ対する支援と認識されるようになっています。

 

企業における両立支援の取り組み

それでは、両立支援施策として、企業ではどのような取組が行われているのでしょうか。対象・分野別に整理しました。

5-2第一生命「企業における仕事と子育ての両立支援に関するアンケート」2011年 および厚生労働省「育児・介護休業法のあらましー平成29年10月1日施行対応 ー」を参考に筆者作成 ※図中の★は雇用主の義務、☆は努力義務。(★は就業規則に定めずとも場合も対応必要)

 

2017年における取組状況では、特に大企業において取組が進んでいることが伺われます。

■実施、または達成している「仕事と子育ての両立支援策」(全体・規模別)5-3(引用)HR総研(ProFuture株式会社)「働き方改革における『多様な働き方とダイバーシティに関するアンケート調査』」2017年

 

従業員にとって必要な取り組みとは

では、復職後、仕事と子育ての両立ステージにあたって、どのような支援策を当事者が必要としているのでしょうか。

小学校就学前までの子どもをもつ親への調査では、必要な企業の取り組みとして、女性正社員・非正規社員ともに「子育てしながらでも働き続けられる制度や職場環境」が70%を超えています。

5-4
(引用)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業」(2015年)平成27年度厚生労働省委託事業

 

企業に活用度の高い子育て支援策を尋ねた調査では、法定の施策(短時間勤務制度、育休取得)の活用度が高く、続いてフレックスタイム等、子育てとの時間の融通を確保する施策の活用度が高いという結果が出ています。

■社員に比較的良く活用されている(対象者の5割以上)子育て両立支援策5-5
HR総研(ProFuture株式会社)「働き方改革における『多様な働き方とダイバーシティに関するアンケート調査』」2017年

 

 

小規模な団体で両立支援を進めていくために

民間企業における両立支援の取り組みは、特に大企業においては法定の取り組みに加え多岐にわたっています。しかし、様々な制度の中でも、子育てしながらも働き続けることができる時間の柔軟性、時間の柔軟性を担保するための制度、実現可能とする職場風土の醸成が最も当事者に求められていることが伺われます。これらは現在、法定の取り組みに義務・努力義務として加わっています。

厚生労働省が中小企業向けに両立の取組方法をまとめたパンフレットでは、取組に向けたポイントに「法定どおりの両立支援制度の整備」「両立支援制度の拡充・見直し」「制度利用に向けた『働き方の見直し』 」「制度が効果的に利用される『職場づくり』」の4点を挙げています。(3)

NPOにおいても同様に、まずは就業規則の設置、法定どおりの両立支援制度の整備を進めること(4)、その上で必要や団体の取組スタンスに応じた拡充や、両立支援制度のスムーズな利用のための職場風土の改善に取り組んでいくことが肝要ではないでしょうか。

(一般社団法人RCF 中澤裕子)

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(1)~(3)厚生労働省「中小企業における両立支援推進のためのアイディア集(改訂版)」 2013年

(4)法定制度の詳細については、厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし 参考資料(育児・介護休業法における制度の概要)」が分かりやすい。